binary ghost

どこにでもいて、どこにもいない二進法の幽霊

世にも奇妙な今朝の話

 

私はカバンの中の目薬を探していた。

病院に処方箋をもらいにいくだけなんだけど

どうも花粉症らしくて

今日は朝から目がかゆい。

 

や、目薬はすぐ見つかったんだけど

ちょっとカバンの中身が乱雑に入っていて

私はそれがどうしても許せないクセがある。

 

なので、駅前のベンチでカバンの中身を整理して

それから目薬をさして

またそれをしまっていると

隣に一人のアメリカ人男性がすわった。

 

 

「泣かないで」

 

「あ、いえ泣いてません」

 

「無理しないで」

 

「はい、ありがとう」

 

「男は世界中にいるよ」

 

「?」

 

「浮気した男なんてすぐ忘れよう

さあ、わらって!」

 

「いや、あの」

 

「前にすすもうよ」

 

「あ、うん前に進もうとはがんばるよ」

 

朝から浮気されて駅前で泣く女と思われたらしくて

10分くらいすっごい励まされた。

 

誤解だっつーの目薬!って言ったんだけど

全然きいてくんなかった。

 

「大丈夫、世界中の男がキミを待っているよ

例えば僕とかね!だから電話番号ちょうだい」

 

「いや、やめとく

いつかまた会えたらね」

 

「そっか、わかったよきっとまた会おう!」

 

泣いてるように見えて

まぁとりあえず礼儀として

声をかけてくれたんだろう。

 

予約した時間までまだあるし

コーヒーでものんでおこっかな、と

手近なところでコーヒーを買って

 

またベンチで飲んでると

今度は若いのか若くないのか全然わからない

デニムシャツの男性が横切った

 

「やだなぁぼくももう18ですよふふふ!」

 

30すぎてるようにも見えるけど

高校生にも見える

とにかく楽しそう。

 

ちょうど年齢の話をしてたので

へー、18なんだー。と

何気なく耳に入った会話を聞きながら

目をやると

スマホじゃなくてパカパカ開くタイプの

携帯電話で話していた。

 

めずらしいのつかってんなー、と思った。

そのまま男性は駅の階段をのぼっていった。

 

そしてすぐに降りてきた。

 

あれ?同じ人だ、忘れ物に気づいて

降りてきたのかな?とおもったら

まだ話をしながらこっちにむかってきたので

そちらをみていたら

電話はバッテリーがついてなくて

もちろん電源もはいってなくて

でもずーっと誰かと楽しそうにおしゃべりしていた。

 

ちょっとゾワッときて

まだ早いけど

病院はいっちゃおう、と

立ち上がると

 

「あ、あのすみません!」と

高校生くらいの制服姿の女の子に声をかけられた。

 

「ちょっと聞いてもいいですか?

私このへんのこと全然わからなくて」

たしかにけっこう離れた女子校の制服きてる。

 

「あ、ああどうぞ、お力になれるかはわからないですけど」

 

「今ベンチにすわってましたよね」

 

「はい」

 

青いベンチっていう歌しってますか?」

 

「このこーえがーかれるくらーいにー

ってやつですよね?」

 

「そうです!そうです!」

 

「えっと…(道聞きたいとかじゃないの?)」

 

青いベンチならよくあるけど

青いカレーっておいしくなさそうですよね?」

 

「え、ええ?あ、はぁ…」

 

「そこのベンチが青いカレーだったら

どうしますか?味はすっごいおいしいの」

 

「いや…所有権私にないんでどうにもしませんが…」

 

「ごめんなさい、カレー嫌いだったんですね」

 

「えええ?」

 

「カレー中辛派ですか?」

 

「えっと…甘口派っすね…」

 

今日なんなんだよ

世にも奇妙な物語かよ

 

「じゃあ青いカレー甘口にします」

 

「はぁ…あのもうよろしいですか」

 

「もしお時間あるなら今からゆっくり」

 

「あー!いえ!時間ないんです!」

 

「そうですか残念です、ありがとうございます」

 

 

不思議な世界に迷い込んじゃったかと思って

看板とかすっごい確認したし

病院で仲良しの看護師長さん(美人)見つけるまで

めっちゃくちゃ警戒したし

タモリさん探した。