binary ghost

どこにでもいて、どこにもいない二進法の幽霊

コロナウイルス関係ない話

 

コロナウイルスが猛威をふるっているせいで

知人たちが戦々恐々としている

 

たしかにコロナウイルスはこわい

だからっつって、ぼきゅたん

お風邪怖いから、お仕事やすむお!

とは行かないだろうし

 

みんな感染こわいだろうから

落ち着くまでおうちから出ないでね

でも給料は変わらずだすよ

なんて会社があるなら

切実に紹介してほしいくらいだ。

どっかにあったらマジで紹介してください

土下座くらいならいくらでもするんで。

 

まぁ私は現在家から出なくてもいい仕事なんで

そんなに怖がってもいないんだけど。

(しかも実は帯状疱疹になって今月ほぼ休んでるし)

 

そんなとき

以前の職場に勤める

知人の男性から、電話があって

彼はどうやら愚痴があったらしく

開口一番、怒り出した。

 

愚痴りたいだけだとわかったとき

普段は割とふんふん、そーなんだ

好きなだけ吐き出しな、と聞くタイプなのだが

今回は開口一番キレられたのがちょっと(嘘、だいぶ)ひっかかって

私も好戦的な態度だったように思う。

 

 

「おい!元気か久しぶりだな!」から始まった。

相手も言ってる通り、ほんと久しぶりだ。

 

っていうか飲みに行ったことすらないし

仲良かったこともなければ

プライベートの電話も初めてかもしれない

新しい電話番号なんで知ってんのレベルの知人だ。

 

「お久しぶりですね」と返すと

「俺は今さっき失望したよ!」と急にはじまった。

 

私は今朝、どうしても仕事で

早起きしなくちゃいけない双葉ちゃんが心配で

かなり早起きをしたのもあり

おめーは実家のお母さんかよと言われるかもしれないが

双葉ちゃんを朝5時半に起こすミッションに従事していたため

眠くてたまらなくてイライラしていた。

 

「そうなんですね、大変でしたね、お疲れ様です...では失礼しまーッす」

 

と、電話をきろうとしたら

ギャグだと思われたらしく

 

「おいおい!」と笑いながら

ツッコミが入ったが

当方、愛媛のまじめなあのジュースより

まじめに言ったつもりだった。

 

「聞いてくれよ、俺さっき女の人が倒れてるの見てさぁ」

 

聞いてくれ、と言われたので

仕方なく黙ってきいた。

 

「周りに人がたくさんいるのに

みんな遠巻きにみてるのよ、つめたくない?!

女の人倒れてデコぶつけて

血を流してるのにだぜ?!」

 

まぁ、冷たいとは思うので

「はぁ…そうですね」と答えると

 

「俺さ、出勤中だったから

すぐそばのビルの守衛室に声掛けて

女の人倒れたから救急車呼んであげて!

って言ったんだよね

そしたらその守衛さん何て言ったとおもう?

このビルの中で起きたことじゃないので

対応しかねます、だってよ!

人として最低だろ!!」

 

はぁ…

「守衛室駆け込む前に、お前が救急車呼べばよくね?」

としか思わなかったので

なるべくそれを敬語で伝えた。

 

 

「だって俺は出勤中だよ?

その守衛のオッサンはひまそーに座ってるだけだよ?

人の心があるなら、救急車呼ぶくらいして

状況説明したっていいだろ、なんかもう

情けないっつーか呆れちゃってさ

俺クレーム入れてやろうかと思うんだけど」

 

 

たしか、ここらへんでもう

聞く気はなかったけど

イラつきにまかせて

オラついた。

 

 

「おじさんはビルを守るために既に職務中ですよね

あなたが言ってるのは

俺は彼女を助けない、でも後味が悪いから

お前が仕事の手を止めて助けろ!

そうやっておじさんに擦り付けて

手を貸した気分になって悦に入りたいんだ

って言ってるのと同じこと

 

俺が後味よく会社に遅れずにいけるために

仕事をサボってくれないなんて

人の心がない!っていうなら

私はそれを言うことのほうが人の心がないとおもいます。

助けたいなら人に擦り付けようとしないで

自分で助ければいい話じゃありません?」

 

「だってヒマそうなのに」

 

「おじさんは黙って座ってることも

お仕事なのでは?

というかあなたが勝手に判断していいことではないのでは」

 

「じゃあ見捨てろっていうのかよ…」

 

「いってねーだろ!

助けたきゃ自分でいくんだよ!

見捨てたくないなら

会社ぐらい遅れてけ!

自分が見捨てる選択が

心苦しいからって

それを和らげるためにおじさん使うな!」

 

 

 

 

「…」

 

 

黙った。

 

ごめんね、声を荒らげてしまって。

心からクソうぜえこいつ、と思っちゃったから。

 

「失礼、言い方が荒かったですね

でもクレームとかびっくりするほど

お門違いですよ

恥かくだけなのでやめたほうがよろしいかと」

 

「でも倒れてる人がいたら

助けてあげるのが人として当たり前じゃないのかな」

 

「私の話、きいてます?」

 

「だってそうしたら会社遅れるし…」

 

「取捨選択は自由です。

会社に遅れたくないが勝つなら、見捨てればいいじゃないですか」

 

「じゃあぬいちゃんは見捨てられるの?」

 

「現場を見てしまったら見捨てられません

だから自分で助けます

でも会社に一秒でも遅刻したらクビになるとか親兄弟皆殺しとか

のっぴきならない理由があるなら

見捨てます

職務中の見知らぬおじさんに丸投げして

断られたからって怒ることだけは

絶対ないですね」

 

「そんな…俺はただみんな冷たいなっておもったから」

 

「もう切っていいですか?

あなたには見捨てる自由もあるのに

自分が目を背けたいだけじゃないですか」

 

「結局そのまま仕事きちゃったから…

見捨てたことになる…んだよね…

でもさ、いきなり倒れたからコロナウイルスかも!とか

いろいろよぎっちゃってさ」

 

 

「はい、そうだと思いますけど

誰かが助けるだろうって素通りした人と

守衛のおじさん助けろよじゃ

似たようなもんですね

最終的に素通りと同じことしてますし

おじさんはコロナウイルスかかってよかったんですね」

 

 

「あの、それより気になるんですけど

今って就業時間ですよね」

 

「あ、うん

すごいムカムカしてぬいちゃんの番号

業務委託の件で聞いてたから

喫煙所きたついでにかけてみたんだ」

 

 

「その時間あるなら

助けてあげられましたね、その女性。

では、ほんとに切りますね

失礼します」

 

 

 

久しぶりにイッラーーー!っとした。

もちろん速攻着拒した。

 

人の心がないな、わたしって。