binary ghost

どこにでもいて、どこにもいない二進法の幽霊

新年会のこと(前編)

私には、16歳上の仲のいい母方の従兄弟がいます

某局で海外の特派員をしているので

なかなか会えません

 

名前はジュンくん

優しくてテニスが得意で、頭も良くて

親戚のおばさん達のアイドル的存在です

 

今日はそんな彼とお正月に再会した時のお話

 

 

その日は、屋形船に乗りたいという

一番上の伯母のリクエストで

親戚30人近くで集まり

皆で久々の再会を喜び合いました

     

私と弟と従姉妹のゆうちゃんは

三人とも赤ちゃんが好きなので

従姉妹のちかちゃんとこの

産まれたばかりの赤ちゃんをいじくりまわし

 

妹は乗り物酔いが激しいので窓辺で撃沈し

 

叔母は、雑誌の人生相談コーナーに載った

息子の悩みを親戚中に読んで聞かせ

 

読まれた方の息子はお母さん絶対に許さないと言い残してガックリ落ち込み

 

父はおっさん連中と飲んでごきげんに酔っ払い

 

母はイケメン大好きなのでジュンくんにべったり

 

母方は親戚が多いので、いとこもおじおばも

まだまだいるのですが

全員のこと書いてたら日が暮れそうなんで割愛

思い思いに、この席を楽しんでおりました

 

 

私「赤ちゃんておいしそう、ぷりぷりしてる」

弟「食うなよ、俺にかせ変質者」

ゆ「ぬいちゃんの気持ちすごいわかる、はみはみしたい」

弟「お前ら、ちかちゃんの子供舐めまわしてないで自分で産めよ」

ゆ「うるせえ小僧、産ませてくれる相手がいねーんだよ」

私「完全に同意、生意気いってんじゃねーぞ、サル」

 

 

私とゆうちゃんは、同い年

母親同士が一番年の近い仲良し姉妹なせいか

私達も生まれた時から姉妹のように育ち

私とは違って活発で明るいゆうちゃんが大好きなので

私がいつもひっついている感じでした

 

ゆ「今日なんかジュンくん元気なくね?」

私「…わからない、いつもと同じように手足も2本ずつ、目鼻の数も変わってないように見える」

弟「そのレベルの変化ないとわかんねーのかよ

姉ちゃんが人の変化に敏感に気づくとは思えない、ゆうちゃん話す相手間違えすぎ」

ゆ「たしかに、ぬいちゃんの鈍さはやばい」

私「おまえらうるさい」

 

弟「俺がジュンくんでも元気なくすわ、まわりうるっさいおばはんに囲まれてんじゃん」

ゆ「その中でも一際うるさいのが、お前の母さんなわけだが」

私「や、やめろ、その攻撃は私にも刺さる、なんかの偶然で母親同じなんだ、やめてくれ」

 

弟「ばばあとは言え、女に囲まれチヤホヤされるジュンくんのその向こうで

暗く消極的な自分をなんとかしたいと

雑誌に送った相談読まれて落ち込みながら手酌酒のやつと、

親戚が集まってるっていうのに、誰とも喋らず鏡見てるか自撮りしてるナルシストの二人がゆうちゃんの弟な件も忘れないで」

ゆ「うちの弟たちは二人とも小さい頃死んだと思うことにしてある、言うなハゲ」

弟「ハゲっていうな!ハゲてねえ!」

 

私「待てお前ら、久しぶりに会っていがみあうな、赤ちゃん見ろ、心が浄化されるぞ」

弟「ほんと赤ちゃんかわいい」

ゆ「赤ちゃん天使」

弟「赤ちゃんに戻りたい、俺はいつだって赤ちゃん、可愛いさかりの永遠のベイビー」

ゆ「マー坊(弟)マジできっも、私は中学受験終わった頃に戻りたい」

弟「マジできもいだけはやめろ傷つく」

私「私は生まれて来たくなかったかも」

弟「なんでよ」

私「この世は恐ろしいことだらけだ」

ゆ「鬼束ちひろかよ、ガッズチャイルド乙」

私「この腐敗した世界におとされた」

ゆ「How do i  live on such  field」

私「こんなもののために生まれたんじゃない」

弟「とりあえず姉ちゃんは歌うのやめて、死人が出るから」

ゆ「ぬいちゃん音痴すぎてすこ」

私「うるせえ積極的に殺しにかかるぞ」

 

 

屋形船から見る隅田川沿いの夜景を

何枚か写真におさめ

それを後日水没で消失させつつ

赤ちゃんを愛でるだけの二時間ほどのクルーズは終了し

 

それぞれ、千葉、埼玉、神奈川、都内のホテル、二次会組へと別れることになった

 

ゆ「お前らかえんの?飲みたりねえー」

私「帰る!おうちだいすきぃ!

あと24時から推しの配信があるもん」

帯谷しゅん (@obisan0309) | Twitter←ちな、推し

ゆ「あと何時間もあるじゃねーか

それは見ないと命にかかわるもんなんか?」

私「聴き逃したら悔しさで五体がちぎれ飛んで死ぬね」 

ゆ「命握られてんのかよ…」

弟「俺明日彼女と初詣で朝早いし」

ゆ「それは早く別れろ」

私「それか痛めに骨折でもしろ」 

弟「やだねーモテない女って」

妹「早く帰るぞ小僧ども」

私「船酔いしてても威嚇は忘れないね、うちの妹は」

ゆ「ぬいちゃん、またやり返されるよ、弱いんだからやめときなよ」

私「はい」

妹「命は大切にしろよ」

 

妹にどつかれながら、タクシー乗り場へ移動中

ジュンくんに声をかけられた

 

ジ「ぬいちゃん、帰っちゃうの?」 

私「うん、家が私を待ってる」

ジ「ぜんぜん話せなかったから、飲みに行こうよ」

私「わたし酒飲めないもん」

ジ「美味しい手作りのお豆腐を出す店があって」

私「いきます、さぁ今すぐいこう、なう!

24時前には帰るからね!」

ジ「弟くんは未成年だからダメだけど、妹ちゃんもどう?」 

妹「ごめん、船酔いで気持ち悪くて…今ならイラつきに任せて素手で牛二頭くらいまでやれそう」

ジ「つ、次またいこうね、おだいじに」

私「飲んだくれでお馴染みのゆうちゃんも誘おう」

ゆ「聞こえてんぞ、てめえ」

私「あ、ゆうちゃん♡どうせ行くんでしょ?アル中一歩手前ガールの意地にかけて」

ゆ「行かない選択肢がグレーになってて選べない仕様なんだ」

私「行かないって言っても、そんなこと言わずに引き受けてくれんかのう?

ってハイを選ぶまで質問し続けるけどね」

ゆ「ドラクエのしつこい王様かよ」

 

 

めずらしく、三人で飲みに行くことになった