binary ghost

どこにでもいて、どこにもいない二進法の幽霊

天才児としくん

 

 

私には高校生の弟がいるのだが

その弟が、近所の酒屋のご店主から

「店の前で勝手に商売をしている

小学生がいて、その子に用心棒として

雇われている」ということで

母が注意を受けたらしい。

 

弟に聞いたらほんとに雇われていた。

日給100円で。

 

この情けなさに爆笑したのだが

よくよく話を聞くと

このトシくん

なかなかにクレバーで、なんなら

大物の片鱗すら感じさせる。

 

仕入れは駄菓子屋、たくさん買うから少しまけて!と

ミルクせんべいを「子供にしては」大量購入

・それに家からパクってきた練乳を塗りはさみ

普段はスーパーの前で店を開く

・客層は主に主婦、子供はあまり金持ってないので相手にしないらしい

・自分の可愛らしさを存分に生かし

ぼくおみせやさんひらいたの♡

おばちゃんかって!と20円ずつくらい売りつける

500円くれ!とかは言っちゃいけないらしい

・在庫は極力持たない、ギリギリまでねばって

なくなりかけたらウチの弟がパシられるシステム

・スーパーの流入出をきちんと把握していて

店舗も「立ち止まりやすい所」に構える

・5時くらいをすぎると主婦は忙しいので

ターゲットをオッサンにシフト

商品もマヨネーズを塗ったえびみりんせんべいに変えて

酒屋の前に店舗を移動する

・たまにイチャモンつけてくる中学生とかは、うちの弟で応戦

・給料として100円払うほかに、たまに商品の売れ残りとかでガッチリハートをキャッチ

 

ここまで見事な手腕に脱帽したが

彼の御両親は彼をネグレクトしてるとか

お小遣いをあげられないとか

そんなこと一切ないらしく

毎月きちんとお小遣いも貰っているし

清潔な衣服に、三度の食事も与えられている。

 

なぜ、彼は店を開くのか?と

弟が問うたことがあるらしいが

小遣いなんて銀行にあずけたって年利でつく金額なんてたかが知れてる。

ぼくは誰もだましていない。

逆に僕はなんで、まーくん(うちの弟)が

サラリーなんてもらって用心棒に甘んじていてくれるかが

不思議でありがたいよ。

 

と、言ったそうだ。

 

ほんとにそいつ小学生かよ。

 

 

店は結局、閉店させられたが

こんなことでへこたれるトシくんではない。

新たなビジネスモデルを打ち出し

私は、彼がいつか

世界的に有名になっちゃうんじゃないかと

いまから密かに楽しみにしている。

 

あと、うちの弟の小者ぶりがよくわかった。