binary ghost

どこにでもいて、どこにもいない二進法の幽霊

ラブレター

 

私の幼なじみに

ちよちゃんという子がいます

 

母親同士が、私と彼女を妊娠中に仲良くなって

家も近かったことから

家族ぐるみでずっと交流していて

お互いの家の合鍵までもっていて

 

転勤の多かった我が家ではあるけど

彼女と彼女の家族だけは

親交を持ち続け

いわば第二の家族と言っていいくらいの存在です

 

ちよちゃんは、とっても美人で

運動神経がよくて

明るく面白い人なので

男女問わずとてもモテるし

今も昔も

いつもたくさんの人の真ん中にいて

私の自慢の友達だけど

ちょっとだけ感性が独特です

もちろんそこも大好きですが

 

そんなちよちゃんが

この秋に結婚することになりました

とても嬉しい事です

 

旦那様になる、圭一くんは

私たちより一つ年上で

昨年我が家に紹介のために連れてきてくれたのですが

改めて結婚の報告に来てくれました

 

圭一くんはがっしりした背の高い

優しそうな男前で、とても感じのいい人で

昨年会ったときより

少し痩せて精悍な顔つきになっていました

 

ややこしいですが私たち二家族は全員が

私の両親をパパ、ママ

ちよちゃんの両親をお父さん、お母さん

と呼ぶので

(私の父もちよちゃんの父をお父さんと呼ぶし

ちよちゃんの父も私の父をパパと呼ぶので

傍から見るとオッサン同士どういう間柄かわけわからんらしい)

 

圭一くんもそれに倣って

私の両親をパパさんママさんと呼んでくれて

私の両親もすっかり圭一くんがお気に入り

 

「ちよちゃんから、ぬいちゃんは

生まれた時からの親友だって聞いてます

私は一人っ子だけど

ぬいちゃん、りっちゃんがいたから

全然寂しくなかった

一人っ子なの?って僕も聞いた事あるんだけど

ううん、ぬいちゃんとりっちゃんとまーぼうがいるよ

四人姉弟っていってたんだ

まーくんが生まれた時もすごく嬉しかったって」

と言ってもらえて

私も弟妹もでれでれ

 

楽しいこともいっぱい共有してきたけど

私が家族を亡くして、半月ほど

ろくにものが食べられず

一口食べると吐いてしまって

塞ぎ込んでいた時に

ずっと傍にいてくれたのも

ちよちゃんだったので

 

ちよちゃんのこと幸せにしてくれなかったら

末代まで祟ります、絶対に

刺し違えてでも一矢報いてやります

と言うと

圭一くんはびっくりした顔をしたけど

 

「ぬいちゃん普段はおとなしいけど

やると言ったからには

絶対やる女だから、嫌なら幸せにしてね」

と、ちよちゃんは豪快に笑っていました

 

それから、みんなで昔のアルバムを見てると

いつも遊んだ公園の

ジャングルジムのてっぺんで

ポーズを決めるちよちゃんと

高い所が怖くて泣いてる妹

その遠くで水飲み場をゴシゴシしてる私

 

幼稚園の教室で登園時

たくさんの友達に囲まれてピースするちよちゃんと

自分の教室に行きたくなくて泣いてる妹

その後ろで水飲み場のシンクをゴシゴシしてる私

 

岐阜にあるちよちゃんのおじいちゃんちに

みんなで泊まりに行った時

囲炉裏の前でお芋を頬張るちよちゃんと

囲炉裏の火が怖くて泣いてる妹

その奥の台所でシンクをゴシゴシしてる私

 

たくさんの思い出が甦りますが

とにかく妹泣きすぎ

あと私なにかと水まわり気にし過ぎ、姑かよ

 

そんなアルバムを見ながら

母が呟きます

 

ちよちゃんは昔から明るくて

りっちゃんは泣き虫で

ぬいちゃんは何故かいつも

無我夢中でシンク磨いてたわねー

おかげでぬいは正面向いてる写真ほとんどない

三人とも性格違うし

まとまりはなかったけど

でも仲は良かったのよね

三人揃うとイタズラばっかりしてたし

みんな可愛かったわ!

 

でもそんなちよちゃんが

花嫁さんになるのねー

あー娘の結婚式だもの!

ママどんなドレス着ようかしら!!

 

いい話かと思ったらてめーのドレスの話かよ

第二の母親ぶるなら留袖でも着とけ

ドレス買う気でいるのやめろ

 

いつもは無口で、口を開くと

殺すぞテメエとかしか言わない妹も

血が繋がらない人の中で唯一

ちよちゃんのことだけは好きなので

 

ちよちゃんは…

いつも優しくて活発で明るくて

ぬいと違っていつもみんなの中心で…

ぬいと違って私の理想のおねえちゃんだよ…

幸せになってね、ちよちゃん

圭一さん、ちよちゃんをよろしくお願いします

私の大切な姉です、ぬいと違って

…コイツ暗いでしょ?

 

いちいち私と違うこと強調すんな

わかってる、わかってるから

あと最後純然たる私の悪口付け足すのやめろ

 

そして父と弟

ねー、おじさんと酒飲みにいこうよ!

おにいちゃんお小遣いください!

 

もうお前らは帰れ

ここ自宅だけど土にでも還れ

 

 

だいなし!だいなし!

私たちの大事なちよちゃんの結婚だよ!

なんでもっとこう…

なんか素敵なコメントできないかなぁ!

 

全員どつきまわしてやりたいですが

圭一くんの手前それもできないので

鼻息をおさえていると

 

「ちよちゃんは圭一兄ちゃんのどこを好きになったの?」と、弟

 

いいねいいね

そういうのなんかいいね

ナイス質問

 

 

ちよちゃんは、圭一くんをチラッと見て

「最初は全然興味なかったの」とモジモジ

 

花嫁のはじらい、こっちまで照れちゃう

やっぱカッコイイとこかな?

それとも優しいとこ?

キュンとするやつちょーだい!

 

 

 

「でもね、何回目かに会った時

腕の毛がすごーい濃いことに気づいて

何からそんなに腕を守る気で

そこまで生やしてるんだろうって

考えてたら興味がわいてきて…」

 

 

私「あー、毛かぁ、そっかぁ………」

 

 

もうちょっといいエピソードほしかったなぁ

キュンキュンするやつ

聞きたかったなぁ

 

あと毛に「もっと腕を守りたいから生やそう」

ってコントロールできる機能ないから

そんなんあったらパパもっと

頭部守るから

 

 

父「守る気があったら生えてくる毛、パパほしいなぁ」

 

妹「パパ絶対それ言うと思ったわ」

 

私(パパごめんね同じこと考えてた)

 

弟「俺やっとヒゲちゃんと生えてきたんだー、みてみてー」

 

母「ママほくろから金髪生えてるんだけど見る?」

 

 

毛の話もういいやめろ

 

 

そのあと、ちよちゃんのお父さんお母さんと合流して

オッサンたちは圭一くんを囲んで飲み

ママとお母さんは、芸能人の話で盛り上がり

私と妹と弟とちよちゃんは

まさかこの令和目前の2019年に

指相撲大会をしました、ちよちゃんのリクエストで。

主役がやるっつーもんだからさ…

 

 

優勝は、相手の弱みを的確に突く戦法の

妹でした

主役に譲るとかないんだね

 

 

圭一くんと家庭を持って

ケンカする日もあるかもしれないし

辛い時も来るかもしれないけど

ちよちゃんの明るさと真面目さと

前向きさで乗り越えて行けると思うから

心配はしてないよ

 

でも、たまには私のこともかまってね

私と友達になってくれてありがとう

必ず幸せになってね