binary ghost

どこにでもいて、どこにもいない二進法の幽霊

でかい迷子

 

数少ない私の異性の友人に

小木ちゃんとシロちゃんという二人組がいます

同級生です

 

小木ちゃんは魚屋さんの跡取り息子で

いつもニコニコ

がっしり大柄で

のんびりした穏やかな優しい青年で

足場がわるいと咄嗟に

女性に手を貸すようなジェントルメン

 

シロちゃんはイケメンといえばイケメン

だけど変わり者で

よく女の人に一目惚れしては

その場で求婚して断られていて

年がら年中お嫁さん探し中

 

 

シロちゃんが地方に転勤になり

私も海外への長期赴任が多くなってからは

三人で集まることも少ないし

 

三人で集まったところで

最近どーよ、なんもねーわ、帰るか…

と、三秒で会話終わるので

生存確認だけ取れれば良いかんじになっていて

 

「メシはくっているか」

「病気はしていないか」

「相変わらず人付き合い悪いのか」

「早くいい人をさがせ嫁にいけ」

「魚食べたくなったら言えよ、持って行くから」

「女は体を冷やしてはいかんぞ」

など、田舎の父が送ってきそう度の高い

一言メールをたまにくれるが

 

基本的にお互い恋愛などの話は一切しないので

二人に彼女がいるのかすらわかりません

(でも小木ちゃんは優しいので彼女くらいいるかもしれない

シロちゃんには絶対いないと思う絶対に

シロちゃんと付き合うくらいなら

片栗粉でも揉んでたほうが有意義なくらい

彼は男女交際に向いていない)

 

 

そんなシロちゃんが

ある日珍しく電話を寄越しました

 

シ「お久しぶりです」

私「あ、どうもご無沙汰してます」 

シ「お元気でいらっしゃいましたか?」

私「お陰様でなんとか、そちらは?」

シ「ええ、こちらもなんとか」

私「で、どうされました?」

 

何年か前から我々の間では

「仲良くするの飽きたし、妙によそよそしい感じでいこう」

というのが流行っているので

すごく会話は他人行儀です

 

シ「いや実はですね、困ったことになりまして」

私「あらまぁ、何かお力になれることがあれば良いのですが」

シ「実はですね、今休暇で実家に戻ってるんですが…」

私「ふんふん」

シ「実家に両親と兄貴がいないんです」

私「はぁ…」

シ「それどころか、知らないご夫婦と高校生くらいのご子息、ご息女がお住いになってましてね」 

私「え???」

シ「五年ぶりくらいに女子高生と喋れてすげーうれしいです」

私「用事そんだけですか、切っていい?

仕事中なんで」

シ「かわいそwwwおれ8連休www」

 

 

イラァ…

 

 

シロちゃんが博多に行ってる間に

連絡もロクにしないので

御両親とお兄さんは、家を賃貸に出して

引っ越していました

 

そして、シロちゃんは

御両親とも、お兄さんとも仲があまりよくないので

電話番号とかもとくに交換しておらず

実家と家族が行方不明らしい

 

 

さすがにこのまま、生き別れというのもまずいので

シロちゃんのお兄さんたち

ぜひシロちゃんに

新しい実家の場所を教えてあげてください

 

休暇中、シロちゃんは

小木ちゃんの家で二人で過ごすそうです

 

お前らだって

別に素敵なゴールデンウィークなんて

過ごしてないじゃんかよ!!

 

て、電話でいうのは怖いので

電話切ってから

メールで送っておきました

 

シロちゃんと同じような

扱いしてごめんね小木ちゃん

小木ちゃんには幸あれ

 

みんなも、実家が迷子とかいう

訳の分からん事態にならないように

定期連絡は怠らないでね

 

 

実家が迷子っていうか

お前が迷子だよシロちゃん

アラサー迷子だせえ