binary ghost

どこにでもいて、どこにもいない二進法の幽霊

ごめんねを形で表す

 

一年以上前になるが

私の愛猫が病院で息を引き取った

 

先生は手を尽くして下さったが

もともと虐待を受けて育ったため

体も小さく弱く、正確な年齢もわからない

足のない子だったので体への負担も大きかったようだ

 

人間に殴られたり、背中をガス銃で撃たれたり

骨ごと足を切断されたりした子なので

人間を怖がるかなと思っていたけど

 

愛情をかければかけるほど

みるみるよくなってくれて

ガリガリだったのが

ぽゆんぽゆんになって

病院でもいつも大人しくしてくれて

先生には愛想ふりまいて

毎晩一緒に眠って

毎年のように旅行にも一緒に行って

私の宝物となった

 

「偶然だけど姉ちゃんが引き取ってくれて

ぽっしゃは幸せだったとおもうよ

姉ちゃん以外の女の人には絶対なつかなかったでしょ

奴なりの忠誠心だったんだよ

最後まで見届けてあげよう、がんばって」

と、付き添ってくれた妹と弟に励まされてはいたが

 

先生が首をふりながら

悲しそうな顔で出てきたときは

待合室の真ん中で

倒れ込んで何も言えず泣いた

 

それを見ていたご近所の動物好きの人たちが

気の毒に思ってくれたらしい

 

たくさんのお悔やみと

「うちの犬(猫)さわっていいよ…」という

町内のおじさん、おばさん、若いご夫婦

高校生、妊婦さんなどが

たくさん訪ねてきた

 

 

みなさん、ありがとう…

でも、とくに犬ね

一箇所に六匹も集まると

けっこうウルサいのね、ご近所迷惑ね

 

あ、ほらもう

集まったわけじゃない近所の犬まで

吠え出しちゃったどうしよう

 

犬多すぎて

連れてこられた猫は

ふーー!しゃーー!とずっと怒っていた

猫ごめん

 

でも、みんな優しい人だった

 

 

うちの猫の棺にお花をもってきてくれたり

おもちゃを供えてくれたり

おやつを入れてくれたり

「うまれかわったら

またぬいちゃんちの子になるんだよ

次も必ず幸せになれるからね」と

頭を撫でて見送ってくれた

 

動物病院の先生も

休憩時間に立ち寄ってくれた

 

「動物だいすきだけどさ

職務上、注射とかするじゃん?

だからいっつも、動物に嫌われてさ

動物大好きだから獣医になったのにー!

って辛かったけど

ぽしゃくんだけは、こんにちはのチューしてくれて

すんごい嬉しかった」

と、先生も泣いてくれた

 

感謝でいっぱいだった

それでもしばらく泣いて暮らしたけど

 

少し外に出ると

かわいいワンコを連れたご婦人や

 

庭先で日向ぼっこしてる猫と

洗濯物を干してる奥さんなんかが

 

「今からお仕事?がんばってね」とか

「お仕事がえり?おつかれさま」とか

声をかけて慰めてくれた

 

その中に、通勤時必ず通る

滋賀さん(仮名)のお宅があり

庭先ではかわいい雑種犬の

ウメちゃんがいつもウロチョロしている

 

このウメちゃん

私が当時来てくださった皆さんに

お菓子を振舞って

動物たちにはビーフジャーキーを振舞ったことで

(猫にはちゅーる)

一発で私を覚えてくれたらしく

 

私が通ると必ず

「わわっ!、わーわーわーわ?」(なんか疑問形)

と声をかけてくれる

 

それを私は「おう、ぬい元気か?」と

声をかけてくれているもんだとばかり思い

「おはよーウメちゃん元気だよー!」と

手を振って応えていたのだが

今朝、滋賀さんの息子さんが

お仕事にいくタイミングと重なり

 

「あっ、おはようございます

いつも朝と夜オヤツねだる声だすから

だれかと思ってたらぬいさんだったんすね

意地汚くてすいません」

と、謝られた

 

 

あー、あれオヤツねだってたんだ…

気づけなくてごめんウメちゃん…

 

今日のかえり

ビーフジャーキー買って帰ることにした